「パーフェクト・サウンド・フォーエバー」のジャド・フェア

photo by Brian Birzer

ひーっ、ジャド・フェア来日目前! さて、彼の人となりがよく伝わるインタビュー記事があったので(こちら)、つたないながら訳出してみました。

ジャドが兄弟のデヴィッドとはじめたハーフ・ジャパニーズについて、それから音楽のこと、アートのこと……。とかくご大層なことを書きがちな自分への戒めとしても、読んでるそばからウロコがポトリ。うん、ジャド・フェア、僕は大好きだ。彼のライヴはとーっても楽しんだもの! ジャドみたいに踊れたらな。ジャドみたいにギターが弾けたら、ジャドみたいに歌が歌えたら……。でも多分、自分みたいに何かはできるかもしれない。つまりジャド・フェアって、そういうおまじないなのかも。うんうん……(しみじみ)。

ともかく、以下のインタビュー中にある彼の弁を借りるなら、「こんなに素敵なことが体験できる機会があるのに、そうしようとしないなんてただの阿呆ですよ」ってこと。それでは、ジャド・フェアとテニスコーツのジャパン・ツアー2011、3月5日から始まります。5つの町で6公演(詳細はこちら)、みんな、楽しんでってねっ!

ジャド・フェア インタビュー
Interview with Jad Fair from Perfect Sound Forever

僕らがロウなサウンドをキープできている理由は、
単に練習をしないからなんです。

■ハーフ・ジャパニーズはいつ始まったんでしょうか? そのころ(70年代終盤)、ニューヨークやロンドンのパンク・シーンからの影響はありましたか?
○少し似たところがあるなとは感じていました。彼らがハーフ・ジャパニーズに対して親近感を持っていたかどうかは知りませんが(笑)。パンクが僕らに大きな影響を及ぼしたかどうかはわかりません。パンクが出てきたのは最高でしたけどね。最初、パンクはひとつのムーブメントでした。お金にも無縁で、そこが素晴らしいと思いました。もちろん最初の最初から金儲けだったのかもしれませんが、僕はそう感じられませんでした。それから時間が経って、ほとんどのムーブメントがそうなったようにパンクもただの金儲けなんだと思うようになって、興味がなくなりました。

■今の音楽に対しても同じように感じますか?
○そう思えてしまうバンドは多いですね。もちろんお金儲けに反対しているわけではないですよ。みんなお金が必要なんですから。でも、僕はそういう音楽が聴きたくないだけなんです。

■ワイルドなアルバム『Half Gentlemen/Not Beasts』から、あなたはどうやって「完璧なポップ・ソングをつくる」というゴールにたどり着いたのでしょう? 両者はまるで正反対ですよね?
○反対だとは思っていません。最初のレコードだって、僕らはできるだけうまくやろうとしたんです。ええ、そのときはあれがポップだと思っていました。でも、今から思い返すと、多分、ポップとは言えないんだろうなということもわかります。でも、個人的にはある意味ポップなんです。感情的には、あの作品にもポップな感覚があるんですよね。

■あのアルバムは以降の作品とも違いますよね。少なくともサウンドの点から言えば。
○僕のソロ作品とだったら、そう遠くないでしょうね。多分、今のハーフ・ジャパニーズとは違います。どちらかというと僕のソロ・レコードに近いように感じます。

■ソロ作品とハーフ・ジャパニーズとの違いは?
○バンドとやるときは、そのときためてある曲の中からベストだと思われる曲をやります。この曲はソロ用にとっておこうなんて出し惜しみしません。制約があるとしたら、それは時間です。限られた時間内で仕上げるので、頭の中は時間のことで一杯になります。ソロもバンドも僕にとっては一緒なんですが、違いがあるとしたら、メンバーにはメンバーのやるべき仕事があるということです。で、僕がやるべき仕事はソロでもバンドでも同じなんです。

深い意味を歌詞に込める人は、
そこにさも大きな意味があるかのように振る舞って格好つけてるだけでしょう。

■ハーフ・ジャパニーズのレコードで気に入っているものは?
○ファースト・アルバムの『Half Gentlemen/Not Beasts』と『Charmed Life』、それから『Hot』が大好きです。三大お気に入り作品がそれですね。スタジオに入った時間のことが甦るんですよね。スタジオに足を踏み入れたときの感覚が。スタジオにいるのは3、4日のことですが、うきうきして舞い上がっていたのか、落ち着いていたのか、それともむしゃくしゃしていたのか。ちょっとあやふやでもありますが。

■何年たっても生々しいサウンドをバンドが保持している秘訣は?
○僕らがロウなサウンドをキープできている理由は、単に練習をしないからなんです。バンドのメンバーも、今ではお互い離れ離れで生活していますからね。私は大体ミシガンとメリーランドにいますし(編注:現在はテキサス州オースティン在住)、ジョンはニューヨーク、ジャイルスはスイスに住んでいて、ミックはロンドンにいます。これだけ離れていると練習どころじゃありません。したがって当然のように生々しいサウンドになるわけです。

■自分の作品が、自分にとってある種のセラピーのように感じることはありますか?
○うん、そうですね。そう思います。音楽もアートワークも作曲も、必要に迫られている感じがするんです。何もやっていないとすごい欠落感があって。毎日やることがあるという事実からは、すごく安心感を得られるんですよね。普段は使わない部分の脳を使えるんです。使わないよりも使うほうがいいでしょう?(笑)

■女性や、女性にまつわるトラブルみたいなものがあなたの曲には頻出しますね。あなたの人間との関係性や結婚観のあらわれがそこにあると思いますか?
○自分にとってはただの曲でしかないんです。深い意味性みたいなものを僕は曲に込めたりしません。歌詞は韻を踏むための言葉に過ぎないんです。ときには深い意味があることもありますが、大体はそうじゃありません。ただのラーラーラーです(笑)。言葉遊びですね。深い意味をそこに込める人は、普通はそこにさも大きな意味があるかのように振る舞って格好つけてるだけでしょう。ただの言葉ですよ。曲も、そのときに僕が考えたことそのままです。大体、男の人は女性のことを考えるものでしょう? 僕も例外ではありません。

水道の蛇口をひねれば水が出てくるみたいなものです。
曲を書くことも同じで、ペンを握れば曲ができ上がるんです。

■こんなに長い間、モチベーションを保っていられるのはどうしてでしょう?
○幸運なことに、僕はとても才能ある人たちと仕事をする機会に恵まれてきました。そこにチャンスがあったら、僕は何とかしてそれをモノにしようとしてきたんです。今まで大好きな音楽家と演奏ができました。ちょうどヨ・ラ・テンゴとアルバムをつくり終えたところですし、今年はティーンエイジ・ファンクラブやダニエル・ジョンストンとやる予定があります。みんな、すごい才能の人たちです。ジョン・ゾーンとモー・タッカーとやったときは……、こういう話は止まりませんね(笑)。こんなに素敵な人たちと一緒に何かできる機会があるのに、そうしようとしないなんてただの阿呆ですよ。

■そういった人たちと仕事をする以外に、どうやって自分のモチベーションを維持できるのでしょう?
○曲でも音楽でも絵でも、僕は一瞬で閃くんです。いつもこの辺にあるんですよね。よくスランプなんてことを聞きますが、これまで僕にはそういう経験がありません。いつか起こるかもしれませんが。水道の蛇口をひねれば水が出てくるみたいなものです。曲を書くことも同じで、ペンを握れば曲ができ上がるんです。

■あなたは幸運ですね!
○はい!(笑)

■ハーフ・ジャパニーズやソロ、それからコラボレーションで、あなたが特に大切に考えているものはありますか?
○精神、生き生きとした魂みたいなものがあるんです。深刻になってその音楽に手間ひまをかけるよりも、楽しいと感じられることが一番です。一緒に演奏するほかのミュージシャンたちとの共通点もそういうところなんじゃないでしょうか。みんな、自分のやっていることを楽しんでいる人たちだから。

■ちょうどあなたがそうであるように?
○ええ、そうです。

■あなたがやっている音楽と、あなたがつくるアートワークとの間に何かの関連はあると思いますか? それとも、それぞれあなたの中の異なる面なのでしょうか?
○そうですね。でも、どちらも頭の同じ部分を使っていることは確かだと思っています。音楽をやろうと違うものをやろうと。ただ、ギャラリーやアート人種の多くが、音楽家兼アーティストの扱いに困っているのも確かでしょうね。アーティストにとって音楽家であることが妨げになるんですよね。兼業だとシリアスに受け止めてもらえないんです。なぜそうなっちゃうのかわかりませんが、確かにそうだと思います。

■気取ってるんでしょうね。
○ええ、多分そうでしょうね。

■嫌々あなたと仕事をするギャラリーもいろいろ見てきたんですね。
○これというのは難しいですが、そういう気持ちになることはありました。多分、間違っているのは僕で、そういうアート系の人と話しているときに何となく思ったことでしかないんでしょうけど。同じように、音楽畑の人が美術家の人がつくった音楽を「アートっぽ過ぎる」なんて言うこともありますしね。そういうスノッブさは、音楽界のほうにもあります。両方にね。

■あなたはチルドレン・レコードもつくっていますね。それはどういう経緯で?
○子どもたちと接する仕事をしていたんです。12年間、僕はデイケア・センターで働いていました。必要とされる仕事はそこで何でもしていました。子どもに本を読み聞かせたり、一緒に遊んだり、絵を描いたり。僕は子どもが大好きなんです。そういう訳で、子どものために何かをするのが好きなんですよ。本当に楽しいんですから。

■あなたの歌い方もギターの演奏方法も、独自でとても自由ですよね。どうやってそんなことができるようになったんですか?
○自分にとってはロカビリーみたいに感じる部分もあるんですよ。サウンドではなくて、感覚の部分で。初期ロカビリーの生々しいフィーリングです。リズムの乗り方とか、それが大きいんじゃないでしょうか。

■ハーフ・ジャパニーズから、聴いた人にどのようなものを受け取って欲しいですか?
○楽しんでくれたらいいですね。それが一番です。聴いていただいて、うきうきと楽しんでもらえたら。

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