ASUNA Tour Diary (Europe Tour 2016) 第1話

4月14日(土)よりまた何度目かの欧州ツアーへと旅立っていったASUNA(日程はこちらでご覧になれます)。彼からはときどき道中からハガキが届けられ、いつも楽しみにしていたのだけど、と同時にいつか彼のツアー日記を読みたいなと思っていた。帰国した折に興奮して教えてくれる新しく触れたあんなことやこんなこと。最近は彼もツイッターで報告してくれ(こちら)、リアルタイムでツアーの一端を知ることもできるけど、ここにあらためて2016年のツアーの様子をまとめてもらった。本当は昨年、このウェブサイトをリニューアルして読み物ページもつくってみようと彼に依頼していた原稿だけれど、諸事情がありリニューアルにかける時間も当分なさそうなので、この機会に掲載することにしました。

今回のツアーもいきなり乗り継ぎ便に遅れそうになったり、預けた荷物が出てこなかったり、いろいろと災難に巻き込まれているようだけど、不思議といつもなんとかなってしまうのが彼の地力(?)なのかもしれない。一緒にいると心配してハラハラしてしまうこともあるけれど、一旦あきらめて彼のペースに歩みを揃えると見えてくるものがあるのだろう。そして、彼が何度も海外に呼ばれる理由のひとつはきっとそれなのかもしれない。

ちょうどHEADZからはASUNAのファースト・アルバム『Organ Leaf』がリイシューされ、その始まりから彼の音楽は国内・海外を問わず、越境的な性格を持っていたことも、このツアー日記から感じ取ってもらえれば幸いです。決して自己アピールが上手い性格ではないのに、毎年のように請われて海外に出て行き、そこでつながった相手もまた、彼が現在暮らす金沢の町に立ち寄って演奏をしていく。それをあまりにも自然にやっているだけになかなか顧みられることはなさそうだけれど、大事なものほどそうなのだと僕は信じたいと思っています。

さて、それではASUNAの2016年ツアー日記のはじまりはじまり。何度かに分けて時々掲載していきますので、最後まで楽しんで読んでいただければ幸いです。

以上、福田教雄でした。

高校生のときに読んだソニック・ユースの伝記本(編注:『ソニック・ユース・ストーリー』リットーミュージック刊)の中で、リー・ラナルドがバンドの初期の頃からずっと書いているツアー日誌の一部が紹介されていて、そのほとんどは長期ツアーの過酷さや苦労話のようなものだったのだけれど、自分にとってはバンドの冒険譚のように感じられてわくわくしながら読んだものだった。

その当時、英語が全然読めもしないのに海外の『Resonance』とか『The Wire』などの音楽誌を買っていて、謎の演奏家やバンドたちの写真ばかりを眺めて、この音楽はきっとこんなだろうなとか頭の中で鳴り響く音の勝手な妄想にふけってばかりで、バンドをやってるどころか楽器もまったくできないのにオモチャのカセットレコーダーと付属のマイクでワーワーと謎のノイズ? でもないナニカ? を、ひとり部屋でバカみたいに叫んだり遊んだりしてるだけだった。

そして現在。英語もいまだろくに読み書きできず、やってる音楽も当時とそんなに変わらないけど、こうやって海外ツアーの日誌を書くことになった。とはいっても、2008年に初めてヨーロッパに行ってから毎年海外ツアーに呼ばれてるのに、リー・ラナルドのようにいつも日誌をつけていたわけでもなく今回が初めて。今までのツアーも何か記録しておけばよかったと思うけど、いつも帰ってからわずかな知り合いに、こんなことがあったんだよー、って話したりするくらいだったし、いまだに自分自身のホームページ的なものを持ったことがないのでそんなことを公開する場所もなく、自分がやってる「aotoao」レーベルのツイッターやフェイスブックもレーベルとしての情報がメインなので、個人的なこともライブ情報くらいしか書いてない。しかももの覚えにかなり偏りがあるので自分のことはすぐに忘れてしまう。いま住んでる金沢でもそんなツアーの話をする相手もいないし、特に自分の存在自体も知られてもいない。だから時々自分でも「あ、自分ってほんとに海外にツアーとか行ってたんだっけ?」とかそんな気持ちになる。

2010年にバンドのHELLLでアメリカ・ツアーに行ったときに一度だけ「aotoao」レーベルのページに特別にツアー日誌を書いたことがあったけど、実際ツアーに行ってみると毎日いろんな場所に移動してはライブしてたくさんの人に会ったりとツアー日誌を書く時間も気力もない、というのがほんとのところ。HELLLのツアーのときは日程に余裕もあったり、バンドだし演奏以外では自分の負担も少なく(他のみんなに任せっきりだっただけだけど……)。そのおかげで日誌を書けていたのだった、のだけど、そのアメリカ・ツアーの終盤には、ソロでも2回ライブがあったり、現地でのレコーディングなど、いろいろ書くべき事柄がたくさんあったにも関わらず、自分のこととなると急に書くのが恥ずかしくなったり、やっぱり書く時間もなかったりで、結局そのツアー日誌は尻切れとんぼで後半が書かれないままになってフェードアウト、からの日誌の気恥ずかしさですぐ削除。という感じだった。なので、今回の日誌も書きはじめたもののそうなる可能性大。今もヨーロッパ行きの飛行機の中で時間があるから携帯でこうやってメモ程度に書いてるだけで、実際にツアーが始まったらこんな時間もないので、たぶん何も書けないままになるんじゃないか……。でもこういう機会もなかなかないし、時間がなくて途中乱雑になってしまうかもしれませんが、なんとかこのツアー日誌、書き進めていけたらと思いますのでよろしくお願いします。

まずは、今回のツアーの発端から。話は10年ほど前に遡ります。2003年にラッキー・キッチンという当時スペインにあったレーベルから自分はデビュー・アルバム(編注:『Organ Leaf』2003年)をリリースしたのだけど、その後にラッキー・キッチンのリリースのファンだという同じくスペインはバスク地方のアリツァ・ランダルーズという人物から突然メールがあり、彼がこれから始めるというレーベルのコンピレーションに参加してくれないかとオファーがあった。

当時、ラッキー・キッチンは欧米では割と知られていて(日本でも局所的に人気があった)、いくつかその流れからリリースなどのオファーが海外からあったのだけど、自分の英語力のなさでいろいろ恥をかいた経験があり英語恐怖症(?)のようなものに陥っており、英語のメールはもう見たくない、みたいな感じでまったく返事を書かなくなってしまっていて、そのメールも最初はスルーしていたのだけど、アリツァ氏は何度かメールをくれたり、そのコンピには日本からminamoも参加することになってると安永哲郎さんから聞いたりして、ようやく自分もなんとか曲をつくって送ることができた。のだけど、なんとその後は一向に先方からは連絡もなく、そのまま時間が過ぎていき、結局そのコンピレーション・アルバムはリリースされることはなかったのだった……。

それから幾数年が過ぎた昨年、突如フェイスブック上で彼からメッセージが。それは、2016年5月に彼の地元のガルダカオ市でフェスティバルを主催することになったので出演しないかというものだった。渡航費もカバーしてくれるという。ずっと連絡はとってなかったのだけど、過去数年のヨーロッパでのツアーやリリース作品など自分の動向をチェックしていてくれたようで、それで再び興味を持って声をかけてくれたみたい。さらに昔のリリースできなかったコンピレーションのかわりに、今回のフェスに合わせてASUNAの新作カセットを出さないかとも。これらの申し出を引き受けたことと、自分も7インチ作品をリリースしているベルギーのレーベル、ミュウ・ムザク(Meeuw Muzak)から、ブリュッセルとアムステルダムでレーベル・ショーケースとしてのツアーを5月に開催するので参加してくれないかとの連絡もあり、ちょうど両方の時期が重なっていることと、さらに加えて、東京からイギリスへと拠点を戻していたホーム・ノーマルからもアルバムのオファーがあり、その新作リリースも2016年の夏前あたりに決まっていたので、レーベル側と相談して、6月にロンドンでそのレコ発ライブをやることも決まり、晴れて再びヨーロッパ・ツアーを行なうことになったのだった。

自分の場合はどこかのエージェントやマネージメントみたいなものに属しているはずもなく、ただ単にこうやって、どこからともなく突然連絡が来たりして、自然にツアーが決まっていく。自分自身でツアーに行く資金も気力もないので、毎回海外へツアーに行って帰って来るたびに、こういう良い条件のオファーは今後もうないだろう、と思っていると、また忘れたころに誰かから連絡が来る、みたいなことがここ数年たまたま続いている感じ。そして、ヨーロッパに行くとなったらその周辺各国の音楽家やオーガナイザーの人たちもよく誘ってくれるので、それらを引き受けていると毎回気がつけば1か月くらいのツアー日程になることが多い。今回は全体で1か月半のツアーになってしまった。ベルギー、オランダ、フランス、スペイン、ポルトガル、イギリス、ドイツ、チェコ、オーストリア……。全9か国。過去のツアーでのさまざまなトラブルやいつも崩してしまう体調のことを考えると不安しかないけど、考える暇もなく準備もちゃんとできてないままに気がついたら慌ただしく出発の日を迎えることになってしまっていた……。

https://www.facebook.com/kaiolafestibala/videos/868533166606567/

この映像は、出演することになったそのスペインのフェスティバル「Kaiola Festibala」のためにASUNAの紹介ビデオとして「Kaiola Festibala、Coming Soon!」って言ってるような自分が写ってるビデオを送ってくれないかと言われて、そんなの恥ずかし過ぎてできない、と思って、そのかわりにつくったのがこれ。ライブ・インスタレーションみたいにして自分で撮影した。

*第2話へ続く

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