さて、先ほど無事『スウィート・ドリームス』第2号がドーンと到着いたしました。が、ちょっと明日面白いことをやらかすので、そちらのレポートをお待ちいただくとして、ちょうど2008年も折り返し地点ですし、通常のレコード・レビュー・ページがない本なので、ここで2008年前半、よく聴いたアルバムを20枚ほどご紹介するのも悪くないかな、と。とはいえ、すっかりリリース情報みたいなものに疎くなってしまっている部分もあるので、大上段の「ベスト20!」な信憑性があるわけもなく、こんなの最近気に入って聴いてました……くらいの感覚で受け取っていただければ幸いです。もちろん、入れ忘れてるものもたくさんあると思いますし、まだ聴けてない作品もたんまり、なので、それはまたの機会に。では以下が、そのリストです。
・ New Bloods The Secret Life (Kill Rock Stars/P-Vine)
・ Thee Oh Sees The Master’s Bedroom is Worth Spending a Night in (Castle Face/Tomlab)
・ V.A. Life is a Problem (Mississippi)
・ テニスコーツとセカイ テニスコーツとセカイ (noble)
・ Washington Phillips What Are They Doing in Heaven Today? (Mississippi)
・ Scott Tuma Not For Nobody (Digitalis)
・ Vetiver Thing of the Past (Gnomonsong)
・ V.A. Shadow Music of Thailand (Sublime Frequencies)
・ Bon Iver For Emma, Forever Ago (Secretly Canadian)
・ Oneida Preteen Weaponry (Jagjaguwar/Brah)
・ Richard Swift As Onasis (Secretly Canadian)
・ Suicide Live 1977-1978 (Blast First Petite)
・ Loren Connors As Roses Bow: Collected Airs 1992-2002 (Family Vineyard)
・ V.A. Victrola Favorites: Artifacts from Bygone Days (Dust to Digital)
・ Bonnie “Prince” Billy Lie Down in the Light (Drag City/P-Vine)
・ The Aluminum Group Little Happyness (Minty Fresh/P-Vine)
・ Ida Lovers Prayers (Polyvinyl/Windbell)
・ Roger Nichols & the Small Circle of Friends Full Circle (Victor)
・ Baby Dee Safe inside the Day (Drag City)
・ The Explorers Club Freedom Wind (Dead Oceans)
ところで、時々メイルオーダーで利用するサンフランシスコの名レコ店、アクエリアス・レコードからのニューズレターに、アクエリアスがペイスト・マガジンが選んだ全米17の名レコード店のひとつとして取り上げられたこと(記事はこちら)、そして、店主のアンディー(元ア・マイナー・フォレスト/Jチャーチ他:日本にも何度かきてるナイス・ガイ)が、こちらの記事でもインタビューされていることが伝えられていました。なんだかんだとCD/レコードなどの音楽パッケージのセールス不況が伝えられて久しいですが、状況分析・未来予測に終始して嘆くだけではなく、自分がやりたいことに素直に、胸を張り仕事に励むその姿は、とーっても頼もしいものがあります。また、こういう興味深い記事がアメリカでアップされるのとちょうど同じ時期に、日本では『ミュージック・マガジン』が「CDはどこへ行く」なる特集を掲載していたり……、そのふたつの打ち出し方の違いを考えると、かなり面白いと思うんですけど、いかがでしょうか?
QRD:ポータブルMP3プレイヤーとiTunesで「アルバム」ってもののコンセプト自体が消えてしまったと思いますか?
アンディー:そんなことないよ。ただ、音楽の聴き方自体はかなり変わったかもね。iPodを使ってる僕の知り合いはみんなシャッフルで聴いてるから、まあ、「アルバムを聴く」っていうんじゃないだろうね。で・も、それは、もしかしたら聴いてなかった曲だって耳に入るようになった、ということでもあるんだ。最後の2曲が思い出せないアルバムなんていっぱいあるでしょ? それに、収録されてる1~2曲が目当てで買ったアルバムだと、通して聴いてないものがたくさんあるよね。シャッフルで聴いてて、そういった聴いてなかった曲に出くわして、それが新しいお気に入りの曲になるってこと、意外に多いと思うんだよね。すごいジュークボックスみたいなもんで、それはそれでクールだと思うよ。まあ、ぼく自身はいまだにレコードを聴いて過ごしてるけどね。
QRD:ダウンロードのせいで、売り上げに影響が出ましたか? 安く、もしくは違法にダウンロードできることで、CDを買う人が減ってませんか?
アンディー:これまた答えはノーだ。この店でレコードを買う人は音楽フリークだからね。誰かが、彼らにCD-Rを焼いて寄こしたり、ダウンロードして聴けたとしても、彼らはやっぱりレコードが欲しいんだ。でも、そういう状況のおかげで、みんな、以前より多くの曲を聴くようになってるんじゃないかな。音楽を探しやすくなってるし、欲しいと思えるようなレコードも数多く出てる。ここで働いてる子たちだって、みんなiPodを持ってるし、お互いCDを焼きあってて、昔も「カセット録音が音楽を殺す」なんて言われてたけど、僕の大好きなレコードの何枚かって、そういった1本のテープで発見したことがきっかけだからね。「音楽産業の死」なんて言い草は誇張されすぎてるように感じるよ。インディ音楽の領域にいると、特にそう思うね。もちろん、ブリトニーとかマドンナとかコールドプレイなんてのは、悪戦苦闘してるんだろうよ。でもそれって、460万枚の売り上げが450万枚に落ちたってなくらいのもんでしょ? それに、こういったファイル共有とダウンロードはインディーのミュージシャンにとっては、とくに大きな恵みだと思うよ。ただ、レディオヘッドのやり方には賛成できなかった。もし彼らが何らかのステートメントを出したかったのなら、それだったらパッケージ販売だけ、レコード店販売だけに限定して、MP3にもしなければ、ダウンロードもさせるべきじゃなかった。そうして、インディペンデントの路面店と、彼らのレコードをずっと買い続けてくれる熱心なファンに恩返しをすべきだったと思うよ。
QRD:デジタル・ダウンロードの増加、低価格の量販店、そして、多くのオンライン専門店の出現。1990年代と比べて、現在のローカル・インディ・ショップの役割は変わってきましたか?
アンディー:まったく変わらんね。まったく一緒。つまり、こういう店が、他所にはないクールな音楽を見つける場所であり、音楽について喋ったり、お互いのオススメを交換しあえる同好の仲間と出会える場所であり、そして、ミュージック・コミュニティーの集積地で、ライヴもある場所になり、時々、ぶらっと出かけたくなるような場所なんだってことは変わってないと思うよ。みんながみんな、コンピュータの前に腰掛けて買い物したいわけじゃないんだ。まだまだたくさんの人が太陽の下を散歩して通りをぶらつき、昼飯を食べて、レコードを買ったり、本を1~2冊買ったり、人と一緒にたわいもないことをベラベラ言い合って、実際に触れ合ったりしたいのさ。だから、全然変わった気がしないね。