Q&A: Tara Jane O’Neil

もし「タラ・ジェイン・オニールの来日なんて5回目だし、今まで何回か見たから、今回はまあいいかな……」なんて思っている方がいるとしたら、さて、となると困ったなと頭を抱えてしまうわけです。何度も呼ぶのは、つまりは(要らない)箔をつけたくないからで、もちろん大会場できちんとパッケージされた、一生の思い出になるようなコンサートも悪くはないけど、そういうものだけじゃなくて、何度も何度もひとつながりになった体験を自分に重ねられるような、そういうのがあるのも素敵なんじゃないかなと思うんですよねっ。というわけで、タラ・ジェイン・オニールのジャパン・ツアー2010、絶賛前売り予約受付中です(くわしくはこちらの「EVENT」ページで)ので、改めてよろしくお願いします!

というわけで、最近のタラのことを知るのに格好のインタビューがこちらにあったので訳出してみました。インタビュアーはダグラス・ウォーク。スウィート・ドリームスからの『勇猛果敢なアイダのものがたり』で寄稿してくれたポートランド在住の音楽ライターで、実は90年代にダーク・ビラヴド・クラウドってナイスなレーベルをやってた人なんですねぇ。だから、タラも勝手知ったる仲ということで、打ちとけた楽しいやり取りになっています。特に「グランジ女」云々のくだりとか、ちょっと吹き出しちゃった。ぜひ読んでみてください。あと、今回の来日でも、観客の皆さんと一緒にジャムに興ずるシーンはよくあるはず。そちらも楽しみに来てくださいね!

Q&A: TARA JANE O’NEIL

タラ・ジェイン・オニールは、つまり、ひとりの女性の創造的竜巻のようなものである。彼女は、過去15年にわたって印象深いディスコグラフィーを築き上げてきたシンガーであり、マルチ演奏家であり、ソングライターであり、インプロヴァイザーであり、また、ヴィジュアル・アーティストでもある。1994年、ロダンの一員としてレコード・デビューを果たして以来、彼女はドリンキング・ウーマン、ザ・ソノラ・パイン、レトシン、ザ・キング・コブラのメンバーとして活動しつつ、セバドーからマイケル・ハーレーまで、幅広い人たちとのコラボレーションを重ねてきた。そして過去10年、彼女はまた、柔らかく瞑想的な一連のソロ作品を制作している。最近作である『A Ways Away』は、ここ数年のコンスタントなツアーにおいて、ライヴの場で度々披露されてきた楽曲を記録した作品となっている。我々「eMusic」は、現在の彼女のホームベースであるオレゴン州ポートランドで彼女とコーヒーを挟んでテーブルについた。曰く「エクスタティック・タンバリン・オーケストラ」なる名前の観客巻き込み型ジャム・セッションのこと、カラオケ愛、グランジ嫌悪、そして秘密の分身カントリー娘などについて話を訊いてみた。

最近は幾つバンドやってるの? ソロでもライヴやるけど、ミラーのバンドでもツアー回ってるよね?
去年のCMJでは、アイダに参加して、カスタネッツで弾いて、ミラーでもやったし、さらに自分のソロもあった。楽しかったわよ。94年に初めてニューヨークに引っ越したとき、私なんかまだぺいぺいの下っ端だったけど、みんなに「尻軽バンド女」なんて言われてたっけ。そんときは、何のことなのか全くわかんなかったけどね。でも年をとってちょっとは慎重になったわ。年老いた体に残された体力には限りがあるし、なるべく有効に使わなくっちゃね。

ずっとアメリカ国内を転々としてきてたけど、今はようやくポートランドに落ち着いた感じ?
そうね。自分でもびっくりしてる。ミシシッピにいたころなんて、誰も私が好きな音楽なんて見向きもしなかったのにね。でも反対に、私、グランジってやつが大っ嫌いなんだけど、困ったことにポートランドの人ってグランジ大好きなのよね。めちゃくちゃ入れ込んじゃってさ。ま、それが文化ってものなのかもね。

でも、君がいたロダンだって、グランジにくくられかねなかったよね。
ロダンは断じてグランジじゃ、な・い・で・す! メンバーみんなグランジなんか大嫌いだったわよ。そういえば3年前かな、マイケル・ハーレーやアイダとウッドストックでライヴやったんだけど、ライヴ後、フリークアウトした年上の男がやってきて「君の演奏中、詩を書いてたんだ」なんて言ってくるのね。で「あら素敵、読んでくれる?」、「もちろん、ありがとう。じゃ、君に捧げるね」って。その男、ちょっとビート詩人風だったんだけど、その詩に何回も何回も何回も何回も「グランジ女」って言葉が出てくんの! 最後にお世辞で「本当にいい詩ね……。でも、なんで私がグランジ女なのかな?」って訊いたら、その男「君を見ていたら自然に言葉が!」だって。「全然、ち・が・い・ま・す!!」って言ってやったわよ。

君はポートランドでは、もはやカラオケ・レジェンドになってるね。去年のエクスペリメンタル・フィルムメイカー・カラオケ・スローダウン(実験映画作家が集まってカラオケするイベントか何か?)で、オリビア・ニュートン・ジョンの「ザナドゥ」を歌ってめちゃくちゃ盛り上げてたよね。
生まれてからあれほど盛大な拍手を受けたことなんてなかったわ。4,000人の観客の前で演奏することもあるけど、あれがいちばん盛り上がったな。最高だったわ。

じゃあ、エクスタティック・タンバリン・オーケストラについて教えてくれる?
最初はノースキャロライナのグリーンズボロだったかな。2006年のツアー中のことよ。バンドのメンバーが体調を崩してツアーを抜けることになったんだけど、まだ2公演残ってたの。で、足元のタンバリンを踏んで演奏する曲が1曲あったんだけど、たまたま予備のタンバリンが2つあったし、すごく孤独な気分だったから、そのタンバリンを観客に渡して……。それが始まりだったんじゃないかな。この2年間、ポートランドでもよくライヴはやっているけど、2005~2006年は特に大編成での即興ジャムセッションをよくやっていたの。その2つのアプローチを並行してやっていたとき、大人数で打楽器を一緒に演奏することもあって、それがすごくよくってね。まるでゴスペル音楽か何かみたいだった。
そうして、タンバリンを詰めたカバンを持って旅に出るようになって、それが本当に楽しくて。それに文化を計る物差しとしても面白いのよ。パリだと、観客は座ったままで、ライヴでうっとりして静かに聴き入ってる感じなのね。そこにタンバリンを回しても、みんな床に置いて何もしようとしないの。びっくりよ。
一方、2年前にイスタンブールに初めて行ったのね。みんな歌詞をちゃんと覚えていて、すごくエキサイトしてたから、きっと私の曲は違法ダウンロードで聴いてるんだと思うけど、ともかく、そこにタンバリンを手渡すと、普通、セッションなんて長くても大体1曲分に収まるものだけど、トルコじゃ何と45分も続いたの! 最初、その曲を普通に演奏して、途中で伴奏をお願いしたんだけど、どっかの瞬間にスイッチが入っちゃったのね。それから延々ジャム・セッション。いかに観客や地域の違いが大きいかを見せつけられたわ。ある意味、リスキーだけどね。だって、ライヴに没頭している最中にタンバリンを投げられたりしたら、そんなの嫌だ、興味ないよって人だっているもんね。でも、それが功を奏するときもあるの。もう何年もやってるし、普段は同じことを繰り返すのは嫌いな性質なんだけど、これだけは飽きずにやってるわ。

アルバム『A Ways Away』には、ここのところずっとライヴで演奏していた曲も入ってるね。数年前に出た画集『Wings, Strings, Meridians』の付録CDに入ってた「Pearl Into Sand」の別バージョンとか。
ずっと演奏してることもあって、この曲はまさに一心同体って感じなの。ステージで煮詰めていった曲だしね。作曲には長い時間がかかるほうだけど、こういう感じで仕上げた曲って余りないの。この曲からライヴを始めるんだけど、ショーに向けてのスペースをつくるには使える曲なのよね。そういう意味では「Dig In」もそう。レコードでは最初の曲だけど、ライヴだと一番最後に演ってるの。前作から3年が経ってるけど、この作品はすごく気に入ってる。持ち曲の形をじっくり変えていったせいもあるんじゃないかな。

自分で書いた曲の中で、気に入っていても自分っぽく響かない曲ってあったりする?
そうそう。あるのよね! このアルバムをつくってたとき、そういうことをよく思ったわ。1曲1曲に個人的な目的はあるけど、必ずしもリリースされなければならないってわけじゃない。ちょうど自分が描いてるドローイングみたいなものね。そこに積まれてる絵はただのドローイングに過ぎなくて、世界に向けて発表するためにあるわけじゃない、みたいな。気に入った楽器の演奏はたくさんハード・ディスクに入ってるんだけど、まだその演奏が鳴るべき会場は見つけられてないの。
それに、その場のノリでカントリーを演ったガレージ・バンドのファイルもたくさんあるのよ。自分の中に、そういうカントリー音楽用のキャラクターがいるの。現実世界では知られていないけど、ちゃんとそこに存在してるのよ。名前はロンダ・ペイチェック。ロンダ・ペイチェックは、ある日チャンスをつかむの。リンダ・ロンシュタットを思わせる70年代のカントリー・ロック歌手。でも、彼女には誰も知らない秘密の愉しみがあって、それはアコースティック・ギターの小曲を演奏することなのね。でも、ある日彼女は死んでしまう。ナッシュビルのスターの多くがそうだったような、ひどい死に方でね。そうして、その秘密の曲がリリースされて、多くのヒップスターたちに愛されることになるのよ。

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