スウィート・ドリームス第4号のツアー特集の一貫として、先ごろ、『Sleepwalking through the Mekong』というタイトルのDVD/CDをリリースしたロスアンジェルスのクメール・ロック・バンド、デンギー・フィーヴァー(つまり「デング熱」ですな)をインタビューする予定です。
というのもこのバンド、ボーカリストこそカンボジア人女性ですが、バックはアメリカ人。例えば、スクリーミング・ミーミーズという奇天烈バンドのメンバーがカンボジア旅行から持ち帰ったカセットをまとめた編集盤に『Cambodian Rocks』という名品があるのですが、きっと、それなんかに触発されたに違いない、クメール・ロックの失われた伝統を今に甦らせるべく奮闘中のバンドなのです。
「失われた伝統」というのはつまり、70年代のポルポト政権下、ほとんどのミュージシャンたちは多くの知識人同様、強制労働に従事させられて死ぬか殺戮され、その歴史を文字通り根絶やしにされてしまったため。デンギー・フィーヴァーのはじめてのカンボジア・ツアーを追った『Sleepwalking through the Mekong』。さらに、同じプロデューサーによる完成間近のドキュメンタリー『Don’t Think I’ve Forgotten (Cambodia’s Lost Rock and Roll)』(余談ですが、この映画にプロデューサーのひとりとして関わっているアンドリュー・ポープという人が、80年代のDIYインディー/パンクのドキュメンタリー映画『Losers Take All』をクランクインしたそう。これも楽しみ)。どちらも(1本は今のところ予告編だけだけど)、屈託のない笑顔とチープでお茶目なアンサンブルとは裏腹に、デンギー・フィーヴァーが愛した音楽の背景にある凄惨な歴史を考えるきっかけになるのでは、と思います(かくいう私も、遅ればせながら勉強中)。
とはいえ、ポルポト政権以前、カンボジアの愛らしく、ちょっと間抜けで豊かなロック/ポップの歴史は、先述の『Cambodian Rocks』だけでなく、第3号で取り上げたサブライム・フリークエンシーズからも『Cambodian Cassette Archives』なる秀逸なコンピレーションが出ています。デンギー・フィーヴァーともども、ぜひ、聴いてみてね。できれば、うんと湿度が高くてムシムシする日にでも。