ル・トン・ミテことマクラウド・ズィクミューズが自身のSoundCloudにアップしている「Mystery Trail」の解説として、彼は下のような文章を寄せています。この曲だけでなく、アルバム『複合過去 条件法未来(Passé Composé Futur Conditionnel)』全体を紹介する良いきっかけになりそうな文なので、ここで訳出してみます。
静寂(サイレンス)は、音楽の世界で僕らが通常聴くことになるだろうと期待するものではありません。もちろんジョン・ケージなんて人もいましたが、普通ミュージシャンが演奏してくれるだろうと聴く者が期待するのは音のある音楽です。過去2年の間、なんと形容していいか見当がつかないなりに誰もがエンジョイできてしまうとあるグループが沈黙を守ってきました。そのグループこそル・トン・ミテ。2014年の秋以来、グループのリーダーであるマクラウド・ズィクミューズは、世界中を旅し、ツアーし、(曲を)書き、演奏し、ソロ・プロジェクトをひとつのグループへと変化させて、アルバム『複合過去 条件法未来(Passé Composé Futur Conditionnel)』を構成する一連の曲を録音してきました。そしてついに、静寂ではなく大音量で、このコレクションから数曲を公表するという決定がなされたわけです。
ル・トン・ミテの風変わりなサウンドと小さなコンポジションに耳なじみがある人にとっては、これらの曲がとてもポップであることにショックを受けるかもしれません。しかしその実、奥へ奥へと這っていけば、あなたが知り、かつ愛しているものの進化を聴くことができるでしょう。また、ル・トン・ミテのことを何も知らない人にとっても、アメリカ横断ジェット気流を少しだけ体験できるうってつけの機会になるに違いありません。
それこそが「Mystery Trail」、ディアフーフのジョン・ディートリックがプロデュースしたこの曲は分離したステレオに始まり、ギターのメロディラインと背景のビートが露わになっていく未知のサウンドで、あなたを魔法の土地のハイキングへと誘うでしょう。
アートワークはイラストレーターのアン・ブルーニによるもの。ジャケットは、このアーティストが「アメリカの大風景」の中で経験した瞬間瞬間の解釈を反映したものですが、その反映こそはまたここにある像や線によってドキュメントされたものとなるのです。
さらに、進化したル・トン・ミテを聴いていただくために、マクラウド・ズィクミューズが送ってくれた資料の中に「参考作品リスト」を発見したので、ここでそれを紹介させていただきます。『複合過去 条件法未来(Passé Composé Futur Conditionnel)』の素というには大げさかもしれませんが、これらの音楽作品がマクラウド・ズィクミューズをインスパイアし、なにがしかのヒントを与え、少なくとも彼の創作意欲を大いに励ましたことは間違いありません。すべての作品に添えられていたわけではありませんが、マクラウド本人によるひと言コメントもあわせてお楽しみください。
MINUTEMEN – Double Nickels on the Dime
(SST, 1984)
信じられないほどの複雑さとスゴいリフ満載のこの2枚組アルバムは、友情と政治意識についての無制限の祝祭だ。経済的ジャム(Jamming Econo)。若いころの自分にとっては曲の長さについての指針でもあった。「最大の呪いを曲に、ギター・ソロは最小に」ってね。
THE BEATLES – The Beatles
(Apple, 1968)
DEERHOOF – The Runner’s Four
(Kill Rock Stars, 2005)
ここにある曲は、視野やサイズの点でさまざま。このアルバムのリリースに続く彼らのアメリカ西/東海岸ツアーに同行できて、僕は本当にラッキーだった。このアルバムはアナログ盤だと2枚組になるんじゃないかな。
COCTEAU TWINS – Treasure
(4AD, 1984)
僕の弾くマリアッチ風アコースティック・ギターにエフェクターをかけると、このアルバムからの偶然にして明白なインスピレーションを聴いてとれるだろう。
NIRVANA – Nevermind
(DGC, 1991)
ディストーションをかけたグランジ・ギターのリフが必要なときもあるよね。
THE CURTAINS – Fly Bys
(Thin Wrist Recordings, 2002)
クリス・コーエンは、この後も本名で素晴らしい仕事を続けているけど、僕の人生を変えたのはとにかくこのアルバムなんだ。
MAHER SHALAL HASH BAZ – C’est la Dernière Chanson
(K, 2009)
2003年以来、僕もメンバーに加えていただいているグループ。ここから影響を受けないわけがない。
BRIAN ENO – Taking Tiger Mountain
(Island, 1974)
このアルバムを聴いたとき、これは新しいって思った。
MARVIN GAYE – What’s Going On
(Tamla, 1971)
驚くべきは、マーヴィン・ゲイはある時期ベルギーのオーステンデに住んでいて、自身のラスト・アルバムの何曲かをここでつくっていたことだ。とはいえ、この作品で彼はいくつかの難問に取り組んでいる。彼はゲットーについて歌い、僕は近年の世界的ゲットー化について歌っている。
MIKE OLDENFIELD – Tubular Bells
(Virgin, 1973)
ヴァージン・レコーズが誇る独立独歩の音楽家。時間感覚はまったく正反対だけど、重ねられたギターから見えるものは同じだね。
PHAROAH SAUNDERS – Karma
(Impulse!, 1969)
彼はサン・ラがアーティストネームを提案するまで「リトル・ロック」って呼ばれていた。このアルバムはサンダースのサックス演奏の腕前と力をしっかりと伝えているね。
LOU REED – The Bells
(Alista, 1979)
RUM – Rum. 2
(Phillips, 1974)
ラジオ番組でかけるためにベルギーのアーティストを調べたり、レコードを集めているんだけど、ある友達が彼らのファースト・アルバムをくれたんだ。このアルバムは中古盤屋で見つけたもの。ヒュンメル(注:ヨーロッパ北部にあるチター属の楽器)をそれとなく使っている曲がある。ポール・ランスと連絡を取り合う間柄だったのは幸運だったよ。ライナス・ヴァンダーウォーケンのため、この楽器の録音テクニックについて問い合わせることができたからね。
NAPALM DEATH – Scum
(Earache, 1987)
メタルの俳句