前回お伝えしたように『スウィート・ドリームス』第2号発行まであと少し。予定通り、7月14日には店頭に並べられると思いますので、どうぞお楽しみに! と、ここでドラッグ・シティのニューズレターに載っていた、ウィル・オールダム(ボニー・プリンス・ビリー)へのお悩み相談がなかなか面白かったので少しご紹介。タイトルはズバリ「Ask Bonny(ボニーに訊け)」。エキセントリックに見えて、じつはすごーく誠実な彼の人柄がしのばれる好企画。ふむ、「物事はハードだからこそ良い」か……。
どうして、生きてると大変なことが多いんでしょう? /パトリック
親愛なるパトリックへ
そういうもんだよ。昔、アニキがオレのことを恥に思った時期もあったんだぜ。そのときのオレはがっくりとうなだれて、暗~い仲間に囲まれてたんだ。あざけるように罵られたもんさ。「お前は一体なにやってんだ? いつもいつも物事を悲観するもんじゃないぞ」ってね。ヤツの言ったことは、確かにその通りだよなあって思ったよ。オレの思い違いじゃなければ、ビル・マーレイが『ミートボール』のなかで、群集を導いて「そんなの関係ねえ」って繰り返してたけど、そんなんじゃあ、ヤケクソになっちまうだけだ。それに、物事って、ハードだからこそ良いことだってあるんだゼ。締まったあそこや括約筋にはハードなペニスがいいし、柔らかい道より硬い道の方がタイヤの摩擦も減る。安易な道なんて、ただ人間を怠けさせるだけ。視野が狭くなって、大した仕事にならないことの方が多いんだ。大体は、ね。
親愛なるボニーへ
寂しいときはどうしていますか? /パトリック
親愛なるパトリックへ
いま、オレには寂しくできるような時間がほとんどないんだ。こんなことって、いままでそんなになかったんだけどね。いま、オレは38歳だから、自分の境遇を楽しめるようになるのに36~37年もかかったことになる。それから、静かな環境になじむまでにもね。その前は、ひとりぼっちになるのが怖くてね。そんなときには、読書したり酒を飲んだり、映画を見ることで、人づきあいの代わりにしてたんだ。もしくは、ものを書いたり、走ったりしてね。客観的に見て、ホントに最低最悪なことをしたこともあったよ。でも、もうそんな時間はないんだよね。とにかく、寂しさを拒否したり忘れてしまうのも簡単だけど、日々の生活に奮闘するのが、寂しさを紛らわす最良の方法なんじゃないかな? 草むしり、掃除、手紙の返事……。こういうことって即効の解決方法にはならないだろうけど、毎日の仕事が終わったときには気持ちいいものだし、床に入ればすぐに良い夢が見られるんだよ。
わたしは32年間ニューヨークに住んできたんですが、もうこれ以上、この金儲けの街に我慢できなくなってしまいました。オレゴン州ポートランドとか、コロラド州のユニコーン・フォレストとか、もしくはメイン・ストリートが1本だけの小さな町やロッキー山脈の人里はなれた山小屋に住むことを考えたほうがよいのでしょうか? /ジュリー
親愛なるジュリーへ
良い質問だね! ポートランドは、すごく素敵なところだよ。でも、ポートランドのことを考えると、ピノキオとその友達が話の最初の方で連れていかれる場所を思い出しちゃうんだ。そこは、自分たちが望むものが全部あるような夢の場所で、最終的に、彼らの姿かたちは愚かなロバに一変しちゃうんだよね。これって多分、オレの負け惜しみかな。でも、自分のアイデンティティを新たに作るよりも、すでにある自分のアイデンティティを維持しようと動いているように見える点でも、ポートランドはニューヨークの正反対だって言えるだろうね。そうできる時間と資源に恵まれているからね。ニューヨークって、オレには、選択の自由に似た何かをだんだん絞り取ってしまう街のように映るんだ。とはいってもポートランドだって大きな町だし、お互い幸せにやってくためには妥協しながら暮らさないといけない。もし、自分のなかのもっとドロドロした部分を探りたいんなら、山小屋こそ格好の場所だろうね。黙示録への気構えをするにもピッタリの空間だしさ。
毎日毎日、日々の仕事を淡々と(もちろん楽しみながら)こなしていくウィル・オールダムの姿勢からは、学ぶこと多いです。年もぼくと同じだし……。再来日が楽しみだなあ(来年こそ!)。ではまた!