今回はアイダを取り巻くグラフィックの番外編として、彼らの写真を撮り続けてきたパット・グラハムのことを一寸。彼は、もともとアイダの最初の3枚のアルバムをリリースしていたレーベル、シンプル・マシーンズとの繋がりが強い人ですが、その名前がアイダ作品に最初にクレジットされたのはサード・アルバム『Ten Small Paces』のブックレット内のバンド写真でした。舞台はニューヨークでしょうか。大通りに面したアパートのベランダに出たメンバー4人(ダン、リズ、ミギー、カーラ)が、仲睦まじくお互いに手を回しあってる写真のことを覚えている人は多いかもしれません。それまでのアイダのアルバム・ジャケットを飾った写真は、レベッカ・ジェイン・グリーソンという女性が手がけていて、彼女の写真もこれまた素敵なんですが、これ以降、とくに4枚目の『Will You Find Me』のジャケットやプロモ写真はパットが手がけ、とくにここ日本では彼の写真を通してアイダの面々の姿形を知ったという人はかなり多いのではないかと思われます。
で、そのパット・グラハムなる人物。彼はまず、グレン・E・フリードマン、シンシア・コノリーと並び、パンク~ハードコアの現場型フォトグラファー御三家のひとり、と紹介するのがきっと筋でしょう。とくにディスコード~シンプル・マシーンズ所属のDCエリアのバンドのライヴ写真に定評がありまして、そうだと知らなくても、彼が撮ったフガジやメイク・アップ、ジューン・オブ・44やモデスト・マウスの写真、きっとどこかで見たことがあるのでは? もちろん、その写真はさまざまなバンドのアルバムやシングルのカバーにも使われ、昨年にはアカシック・ブックスから『Silent Pictures』という写真集(↑)が発行されていますので、ぜひ興味ある方は手に取ってみてください。
なお、彼は2000年にロンドンに移住し、現在は、写真家/デザイナーであり、公私に渡るパートナーでもあるメラニー・スタンデイジと共に、96ギレスピーというギャラリーを経営しています。そのギャラリーでは、ここでもよく紹介するタラ・ジェイン・オニールやラングフィッシュのダニエル・ヒグス、ティム・カーなどなど、彼ならではのコネクションが窺えるアメリカのアーティストの作品を多く展示していますので、ロンドンを訪れた際にはぜひ覗いてみてください(って行ったことないけど:笑)。ちなみに、その内部の様子は下の映像で少し覗けます。96ギレスピー内部でのタラ・ジェイン・オニールのインタビュー映像なのですが、インタビュアーがグランジ・ブームの火付け役として知られるジャーナリスト、エヴァレット・トゥルーというのも見モノ(彼が『Melody Maker』で働いていたとき、サブ・ポップの要請でシアトルに赴き、彼の地の「グランジ」シーンを取り上げたことが、ブームの大きな引き金のひとつになったのでした)。決して豊かとはいえない髪の毛をタラに切られちゃってますが(笑)、彼が発行していた『Careless Talk Costs Lives』、すごく良い雑誌だったな、と、あらためて。ともあれ、パット・グラハムの写真は、下のデヴィン・ブレイナードやアイダ・パールの作品を含めて、多数、『勇猛果敢なアイダのものがたり』に盛り込んでいますので、どうぞご期待ください、ネ!