では、アイダをめぐるグラフィック・アーティストのふたり目。それは『勇猛果敢なアイダのものがたり』の表紙アートも手がけているアイダ・パールという女性です。彼女は、アイダのサード・アルバム『Ten Small Paces』以降の一時期、ヴァイオリニストとしてアイダに加わっていたこともあるので(アイダなるバンドにアイダさん入っちゃうなんてちょっとしたマジックよね)、きっと彼女の名前を知ってらっしゃる方は多いでしょう。また、彼女はこれまで、マグネティック・フィールズ、ロウ、テッド・レオ・アンド・ザ・ファーマシスツ、フラッシュペイパーなどの作品やステージでヴァイオリンを弾いてきた経歴を持っています。そしてもちろん、アイダの『The Braille Night』やエリザベス・ミッチェルの『You Are My Little Bird』、テッド・レオの『Living with the Living』のカバーで使われている愛らしい貼り絵を手がけたのも、そのアイダ・パールでした。
彼女は、いまもニューヨーク暮らし。最近はミュージシャンとしての活動は控え、どうやらアーティストとしての活動に焦点を絞ったそうで、そのウェブサイトを覗いてみると「ファイン・アート・フォー・チルドレン」と銘打ち(こないだのタラ・ジェイン・オニールの日本での展示のキャッチコピーは「チープ・アート・フォー・プア・ピープル」だった:笑)、原画だけでなく、アルファベット・カードなどのステーショナリーが用意され、なかなかの人気を博しているようです。
にしても思うのは、下のブライアン・セルズニックにしても、このアイダ・パールにしても、また、チルドレン・アルバムをリリースしてきたエリザベス・ミッチェルにしても、「子どものための」としながらも、ありふれたマーケティングを逆手にとって、それだけにとどまらない器の大きさがあることです。それでいて最終的には素敵な「子どものための」に還流していく。こういうのって何かのたくらみではできないよなぁ、と、感慨にふける今日この頃。きっと、これから『BALLAD』という雑誌を発行しようとしているsaitocnoのふたり(今回、寄稿していただきました!)がやろうとしているのも、こういうことなのかな、と、楽しみにしているわけです。