ジュヌヴィエーヴ・カストレイのインタビュー(後編)

写真はギャラリー・セプチマのジュヌヴィエーヴ・カストレイ、サウンドチェック中の様子

前編に引き続き、英リーズのジン/ブログ「Colouring Outside the Lines」に掲載されていたジュヌヴィエーヴ・カストレイのインタビューをお届けします。後半は質問もさらにシリアスに、実は今回あえて訳さなかった部分もあって、そこでは長々とした質問にジュヌヴィエーヴ本人も引いちゃってる瞬間が見受けられますが、それはまた彼女の作品の読者層/オーディエンスのシリアスさを反映していると言えるかもしれません。

そういえば今回一度だけ立川のギャラリー・セプチマでライブ・パフォーマンスを披露してくれた彼女ですが、お世辞ではなく「あんなに楽しいライブは初めてだった」と何度も何度も言ってくれたのも、今から思えば未知な音楽にオープンでフレンドリーなセプチマのお客さんのお陰だったのかも。どうしても彼女を紹介する際にはフィル・エルヴラム(マウント・イアリ)のパートナーであることが先に立ち、ことあるごとにそのことの不満や悩みを打ち明けてきた彼女だけによい気分転換になったのかもしれません。

ともあれ今回の展示もついに日曜日(12月2日)まで、ぜひひとりでも多くの方に彼女の作品を実際に見ていただければと思います。また、今回は特別に通常より安価な値段で作品も販売しています。これも彼女が愛する日本のオーディエンスへの恩返し。二度とないこの機会ですので、どうぞお見逃しないように。よろしくお願いします! なお、展示の概要についてはこちらをご覧ください。

パルコブックセンター渋谷店での「解除」展で販売中の陶製火山

■あなたの作品の多くにある注意深く入り組んだ細部は否が応でも目を惹きますし、もはや完璧主義とさえ言えるかもしれません。アートにおける、さらにあなた自身の作品の中にある完璧主義についてどう思いますか?
□仕事中の私を見てイライラしちゃう人も周りにはいるみたい。すごく時間をかけているから。他人から見たらもう十分完成しているように見えるのにまだ描き込もうとしてるなんてどうかしてると思っちゃうんでしょうね。ただ、細部に深く深くのめり込んでいくのは、私にとってはメディテーションみたいなものなの。そうすることで癒やされることに気づいたのね。

■アートワークに生命を吹き込むということでは、そのビジュアル面だけにあなたの全人生、全思考を語らせるのは難しくないですか? あなたの作品には画集付のレコードがありますが、音楽を付随することでより深い次元、知覚上の生命が感じられる一方、ドローイングに音楽を足すこと、もしくは音楽にドローイングを足すことは人に大事なポイントを見誤らせることになるんじゃないかという気もします。ひとつのプロジェクトにおける音楽/ビジュアルのクリエイトは両方同時に立ち上がるものですか? それとも音楽をドローイングに翻訳したり、またはその逆の方法で出来上がるものでしょうか?
□私は描きながらいつも小さなメモに注釈を書きつけてるの。心に浮かんだいろんな考えを紙片に書いていくんだけど、その中には音楽にまつわるものもあってね。答えは半々かな。描いているときに音楽のことを考えたり、音楽をつくっているときにドローイングのことを思いついたり。それによく歌を歌うし。

■あなたの作品の多くは「L’Oie de Cravan」という詩の出版社から発行されていますね。ビジュアルと書かれた言葉、口に出して読まれる詩の関係性についてどう考えていますか?
□自分の絵を詩の出版社から発行するなんてちょっと格好つけ過ぎだって思われる気もするけど、ドローイングも広義の詩だと思うことにしてるわ。

■あなたの次の作品はあらゆる種類の戦争と衝突がテーマになるとお聞きしました。現代以上にアートが近所のコミュニティーと地球の最果ての両方に同時にインパクトを与える時代はなかったと言われています。現代は自分たちの周囲であれ遠くの場所であれ、影響を及ぼし、物の見方を問い、政治的/経済的な意味、社会的身分や立場に頼ることなくアートを通して自分たちの周りの世界に作用する能力と機会に恵まれるようになりました。この見方をあなたはどの程度賛同しますか?
□私を含めた多くのアーティストは単にアートをつくる以上のことに加担していると思う。でも私は世界のありようについてアートの世界ではまだ十分に語られていないように感じています。アーティストたちは世界のあれこれについて特に関心を寄せている人たちだと思うけど、実際には一体何をやってるのかしら? どこに目をつけてるのかな? 自分のマイスペースのアカウントのことでいっぱいだったりして? それともソニック・ユースの掲示板? 子どものとき自分が好きだったテレビ番組のコンプリートDVDコレクションとか?

こちらもパルコブックセンター渋谷店での「解除」展に出品中のスウィート・ビーンズちゃん
ちょうど空豆ぐらいの大きさで3個1セット、か、かわいい…

■あなたの作品とあなたのアーティスティックなアイデアの多くは、読者への支援の視覚化、楽観主義、元気づけ、誠実な励みといったものになっています。衝突もしくは無衝突への希望からインスパイアされたプロジェクトを進めることで、あなたは自分の読者に何を伝えたいのでしょう?
□私が使う「不屈の愛(タフ・ラブ)」っていう言葉の意味は、つまりそういうことなの。これは今現在私のお気に入りの言葉でね。私にはずっと好きだったふたりの作家がいて、それは昨年惜しくも亡くなってしまったジェイン・ジェイコブスとヘレン・カルディコット博士なんだけど、ふたりともとても教育的な声を持っていたの。どちらも耳の痛いことでも一人ひとりに直接語りかけるような母親的な部分があって、私が耳を傾けたいのはそういう言葉なのよね。「あなたの長い人生、つらい労働を通して得た収入はずっとあなたのもの。あなたは妥協しなければ生きていけないような人間のひとりじゃない」なんて言われるより「そうよ、希望はあるわ。でも世界を変えるには私たちがお互い妥協して歩み寄ることも必要よ」って言われる方がずっとましでしょ。

■最後にあなたはずっとアート/コミックのワークショップに関わり、誰もがコミックをつくることができるという信条をサポートしてきましたよね。ほかのアーティストたちと結びあうこと、彼らの創造性をインスパイアすること、自分のアイデアと共に過ごすことを皆に促すことで授かったものがあるとすれば、それは何でしょう? 
□自分ではこういうワークショップみたいなことをもっとやらなきゃと思ってる。私がやることを学ぼうと、またどうやってそれをやるかということを学ぼうとしている見知らぬ人の前で歩き回ったり、一緒に座ったりしていると、とても素晴らしい気持になれることがある。最高なのは自分のコミックについて一切話さなくていいということね。話すべきは彼らのコミックについてなんだから。

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