まるで建物が歌っているような:メイン州ポートランドのタワー・オブ・ソング

これはコングレス通り602番地の奇跡、かもしれませんな。素敵な話です。以下、おなじみ『Arthur』のウェブサイトから。
通りから生演奏が聞こえてきたようだった。しかし、視界に入る唯一のバスカーはサックスを太ももの上に置き、ポートランド美術館の前に座っている。数人が宙を見上げ、コングレス通り602番地にあるビルの4階の窓に映ったシルエットを指差している。古いホテルのなかで、シンガー・ソングライターのジョニー・ファウンテンと彼の友達のウィル・エスリッジは、メイン州ポートランドのファースト・フライデイ・アート・ウォークというイベント期間中、簡単なライヴ・ショーを企画していた。彼らはそれをタワー・オブ・ソングと名づけている。

「ジョンはミュージシャンで、ぼくたちはいつもビルの窓から外を眺めては“こりゃ最高のステージになるよな”って言ってたんだ」とウィルは言う。「で、窓を開けて、通りの向こう側にPAを向け、即席コンサートでもしてみようじゃないかって思ってね」。

それは1月の最初の金曜日のことで、メイン州一の大都市(人口6万4千人)では、ビルの時計が5時30分を指し、温度計が華氏25度を伝えていた。そして、地元のピーポッド・レコーディングスから作品を出してきた静かなインディー・バンド、デッド・エンド・アーモニーが自分たちの出番をアパートのなかで終えたところだった。ドラマーがカウチに座っている。階下の住人の邪魔をしたくはなかったのだ。

ポートランドで人気のあるデュオ、レディ・ラム・ザ・ビーキーパーのメンバーである弱冠19歳のシンガー、アリー・スパルトロが母親に電話している。

「7番出口よ」彼女は言う。「コングレス通りとハイ通りの角だから」。

数分後、彼女は自分の新作からの曲「Samples for Handsome Animals」を友達のTJメットカーフのギターでプレイしていた。その夜、そのふたりの騒々しく元気いっぱいの「Comet Flies Over the Underbelly」は、ポートランド中の通りに響き渡ることになった。

「イーストランド・ホテルと、ここにある全部のビル全部が円形劇場みたいに作用したんだな」ジョニーは言う。「音で満ちていた。まるで建物が歌っているようだったよ」。

その曲は終わり、建物の中では拍手をする者、キンキンに冷えたビールを飲む者がいた(ようこそポートランドへ。ここは冷蔵庫のビールが温まる場所)。実際の観客は外にいて、その凍えた薄気味悪い土地をウロウロしている。手はポケットのなか深く、ライヴ演奏を聴きながら。数人が通りから喝采の声を上げている。

3バンドが、その無料ライヴを終えたのは6時43分だった。彼らは、ポートランドにあるライヴハウス、ワン・ロングフェローに向かい、これからもう1ステージこなすのだ。

「たまたま聴いてくれてどうもありがとう」ジョニーがポートランドの通りに向かって言い、PAの電源を切った。

追記:ウィル・エスリッジが言うには、これから毎月1回のペースでこの催しをやっていくらしい。さらに、5月に丸1日を使ったイベントをするかもしれないとのこと。苦情が入ったときだけ警察がくるようになっていて、いままでのところ、そういったケースは幸い一度だけである。

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