残暑お見舞い申し上げます

美術館で古い印刷物や版画を見つけると興奮してしまう。特に、そういうもの目当てで行ったわけでなければないほど、とても得をしたような気になってしまったり。熱心に古本を集めて……という性質でもないのだけど、ちょうど次のスウィート・ドリームスの制作に入ったところなので、やはりどうしても参考として考えてしまうのかもしれない。

 で、まず先月に行った近くの世田谷美術館。ちょうど「メキシコ20世紀絵画展」を大きくやっていて、もちろん、目玉はポスターにもなっているフリーダ・カーロの作品になるのだろうけど、個人的には最後の部屋が丸ごとホセ・グァダルーペ・ポサダの版画(写真右)に充てられていて一気に盛り上がってしまった。はじめてこのポサダさんの作品を拝見したのだけど、約100年前の新聞の表紙に刷られたユーモラスな骸骨の風刺画を眺めていると、やっぱり、うまく言葉で言えないのだけど、こう……、カラッとしてズバッと(笑)しなきゃな~と思ってしまう。数日後、家に来ていたTEASIのイッペイくんがポサダの図録を見て、ロス・クルードスにまつわる話を教えてくれたけど、さもありなん。そういえば、いつか取材しようと思っているアーティストにウィリアム・シャフ(写真左/オカヴィル・リヴァーのジャケットから)という人がいて、彼はオカヴィル・リヴァーやゴッド・スピードの作品ジャケットに寄せた版画で知られているのだけど、同じように彼にも骸骨をモチーフにしたグロテスクな風刺作品が多いことを考えると、きっと、このポサダのことも好きなのだろうな。それに彼は、アナルコ・マーチング・バンドのワット・チアー・ブリゲイドのメンバーらしいし、こうなると確実に、両者を繋ぐキーワードは「抵抗」ということになるのか、な。ともあれ、宮武外骨の『滑稽新聞』と大体同じ時期に刷られた100年前のパンク・ペーパーがずらりと並ぶ様は圧巻(悪漢)です。8月30日までやっているのでぜひ。

 それから、閉館間際に行ったので駆け足でしか見れなかった「堀内誠一 旅と絵本とデザインと」展(世田谷文学館)も面白かった。『anan』や『POPEYE』のロゴで知られるグラフィック・デザイナー/絵本作家ですが、姉が読んでいた『anan』なんかによく、お店や街の様子が詳しく描きこまれた海外の街の手描きイラスト地図が載ってたように覚えてるけど、これだったのか! 今度、とある催しに合わせてポートランドのタウン・ガイドを作りたいなと思っているので(行ったことないんだけど:笑)、手描き地図書ける人募集します。また、氏がパリ在住時代に関わっていたというミニコミ『いりふね・でふね』の展示にもうっとり。洒落てるナア。それでいて、人間相手の熱や普段言葉もたっぷり。以前、Audiobunnyの坂本さんにジェフリー・ルイスという音楽家/コミック・アーティストのコミックを送っていただいたのですが、その中にヨーロッパ貧乏旅行を描いたマンガがあった。で、その中のひとコマに、未知の町に降り立った主人公が、まず、その土地のことが載っている「ジン」を手に入れる場面があって、「へぇ~!」と思ったことがある。旅行者がどこかに行って、街で面白そうなイベントやお店を知りたかったら、まあ、普通は書店に並んでいる雑誌やガイド本を手に取るのだろうけど、高いし、自分が知りたい情報はそこにはない。だったらジン(でもミニコミでもいいんだけど)だ、という極々自然体が頼もしい(今の東京なら『tokyoなんとか』でしょうか)。また、それは裏返せば、そのくらい頼もしくて使い勝手の良さそうなジン(でもミニコミでも……)が存在して、また、そういうものが置いてある店が少なからずある、ということなんだろう。『いりふね・でふね』は、その後『オヴニー』という日本語新聞になり、その顛末は『パリで日本語新聞をつくる』(草思社、小沢君江著)という本にまとまっているようなので、今度、読んでみようと思う。なお、こちらの展覧会は9月6日(日)まで、ということです。

最後は週末、久しぶりに京浜急行に乗って足を伸ばしてみた横須賀美術館での「手のひらのモダン─『コドモノクニ』と童画家たち」展。いやしかし、はじめて横須賀美術館に行ったけど、目の前に広がる大海原、立地も建物も立派でビックリしました(さらに谷内六郎館も併設)。こちらは、1922~1944年まで刊行されていた子供のための絵雑誌『コドモノクニ』の表紙や原画の展示だったのですが、何より大好きな村山知義の(けったいな)絵がたくさん見れて嬉しかったな。また、村山知義とは日本の先駆的なダダイスト・グループ(と、その機関誌)『マヴォ』のメンバー繋がりでもある柳瀬正夢の作品も少し。この『マヴォ』は後に田河水泡として『のらくろ』を手がける高見沢路直も参加していたことで知られていますが、関東大震災直後にマヴォがデザインを手がけた可愛い理髪店(下)なんて、写真を見るたびにニヤリとさせられるのです。興味のある人は関連書籍を探してみると面白いかも。こちらは8月23日(日)までなので、天気が良かったら海水浴がてらどうぞ。目の前の小さな浜が海水浴場になっていましたよ。

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