境界を越え、自由に近づく歌……。大きな話題を呼んだ「イムジン河」のカバーと、新作アルバム『オオカミが現れた』収録曲をカップリングしたアナログ・7インチ・シングル。
アーティスト:イ・ラン(이랑)
タイトル:ある名前を持った人の一日を想像してみる/イムジン河
発売日:2021年8月18日
収録曲数:2曲
発売元:JET SET
カタログ番号:JS7S310
価格:1,700円+税
*本作品の発売元は「JET SET」となります。また「イムジン河」につきましては、すでにApple MusicやSpotify等、主要なサブスクリプション・サービスで視聴可能となっていますので、引き続きお楽しみください。
リリース間近のニュー・アルバム『オオカミが現れた』にも収録が予定されている新曲「ある名前を持った人の一日を想像してみる」。そして、もともと朝鮮民主主義人民共和国で生まれ、日本では在日コリアンの友人を通してこの曲と出会った作詞家、松山猛に近しかったザ・フォーク・クルセダーズによるカバーで広く知れ渡った「イムジン河」のカバー。特に後者は、発売禁止処分など日本でたどった平坦でない道のりだけでなく、近年では2018年の元日に突如として公開されたミュージック・ビデオが大きな話題を呼んだことを覚えている方も少なくないだろう。そう、イ・ランが「イムジン河」を歌う映像である。
そのビデオの中では、凍てつくようなイムジン河岸にひとり立つイ・ランが韓国語手話を交えて日本語で歌っていたが、今回、新たなアレンジを加えてレコーディングされた本曲は2番までが日本語で、そして3番は原詞の朝鮮語で歌われることとなった。そこにもまた、彼女の想いがあることは言うまでもない。
また、いまではイ・ランの歌における大きな持ち味となった「語り」は、「ある名前を持った人の一日を想像してみる」でも効果的に差し挟まれ、今までになくシリアスな表情と共に幾重にも折り畳まれた風景をそこに広げていく。そして、そのシーンの中からは「イムジン河」が象徴する分断のみならず、「ある名前を持った人」を震えあがらせてしまうさまざまな脅威、ボーダーやギャップの存在、さらには先述したビデオが公開された2018年と現在を隔てるものにまで思いを至らせてくれるだろう。
群がり飛んでいく水鳥が落とした2枚の羽根、それがこのシングルだとすれば、この2曲は何かをさえぎるものとしてではなく、とうとうと流れ、交じり合わせるものとして聴き継がれていくに違いない。このイ・ランの新しい歌を、いまそこで、ぜひ聴いてみてください。
曲目
SIDE A:ある名前を持った人の一日を想像してみる
SIDE B:イムジン河
イ・ラン(이랑):韓国ソウル生まれのマルチ・アーティスト。2012年にファースト・アルバム『ヨンヨンスン』を、2016年に第14回韓国大衆音楽賞最優秀フォーク楽曲賞を受賞したセカンド・アルバム『神様ごっこ』をリリースして大きな注目を浴びる。その他、柴田聡子との共作盤『ランナウェイ』、ライブ・アルバム『クロミョン~Lang Lee Live in Tokyo 2018~』、デジタル・シングル「患難の世代」、7インチ「ある名前を持った人の一日を想像してみる/イムジン河」を発表。さらに、エッセイ集『悲しくてかっこいい人』(2018)、コミック『私が30代になった』(2019)、短編小説集『アヒル命名会議』(2020)を本邦でも上梓し、その真摯で嘘のない言葉やフレンドリーな姿勢=思考が共感を呼んでいる。今後、サード・アルバム『オオカミが現れた』のリリースを予定している。