ジュヌヴィエーヴ・カストレイのインタビュー(前編)

UKリーズのジン/ブログ「Colouring Outside the Lines」に掲載されていたジュヌヴィエーヴ・カストレイのインタビュー記事をここに訳して掲載することにしました。彼女の考えや活動の背景、日常の様子を垣間見ることで、少しでも彼女の作品や音楽に関心を持っていただければと思ってます。文中にも触れられているように、愛らしく精緻な造形と自然世界、どこか暗く悲しみを湛えた景色/政治観が融合した作品世界は彼女にしかなし得ない最大のもののひとつです。今週からはじまるふたつの展示と一度きりのライブ・パフォーマンスにぜひご期待ください! 展示についてはこちら、ライブについてはこちらをどうぞ。

掲載誌「Colouring Outside the Lines」の表表紙(上)と裏表紙(下)。
「線の外側に色を塗る」っていうタイトルもいいよね!

インタビュー:メラニー・マディソン

ロケーション:元々はカナダのモントリオール出身で今はワシントン州アナコーテスに住んでいます。

自分のアートをどう形容しますか?:くよくよしていて、いつか「確固とした愛」に到達できることを祈っている。

最近の仕事:スイスのドロゾファイルという出版社でのふたつの小さなプロジェクト。

バイト:仕事を特にしていないけど、家にいるときは毎日12時間は絵を描いてます。

好きなもの3つ:よく料理し、よく食べ、よく寝ること。

嫌いなもの3つ:ガソリン・スタンドで売ってるような物しか食べ物がないこと、栄養が足りていない気がすること、7時間以下しか睡眠時間がとれないこと。

日々のインスピレーション:質の良いラジオ番組(かかる音楽というわけではないです)

尊敬する人やアーティスト:ジェイン・ジェイコブス、ギー・バウチャー、悪魔に魂を売ることなく美しく意味あるものを作り続けている人々から成る頑強でインディペンデントなグループ。

仕事をするときに聴くお気に入りのアルバム:今はグルジェフの作品と工藤礼子さんの『Fire Inside My Hat』。でも、最近はインスト音楽をよく聴いてる。

このインタビューは2007年1月に執り行われました。

■やぁジュヌヴィエーヴ、ご機嫌いかが? 最近どうしてる?
□ハロー! 今この瞬間ならとても調子いいわよ。2年がかりの作品がようやく完成したの。コンスタントにツアーに出ていたし、今までやった仕事のなかでもいちばんややこしいものだったけど、それも全部終わり。『Tout Seul dans la Foret en Plein Jour, Avez-Vous Peur?』っていうレコード付きの本なんだけどね。今は次の仕事にとりかかっているところ。ドロゾファイルっていうスイスの小さな出版社が出す2冊のシルクスクリーン印刷の本で数ページやることになったの。ひとつはいろんな作家との共同作業、もうひとつはソロでね。

「今まででやった仕事のなかでもいちばんややこしかった」。ウォーヴ名義でKレコーズより発表したアルバム『Tout Seul dans la Foret en Plein Jour, Avez-Vous Peur?』のアートワーク、この精緻な描き込みを見よ!

■あなたは15歳のときから本気でコミックを描きはじめ、自分でジンもつくりはじめたそうですね。振り返ってみて、そういう早い時期にアートの世界に足を踏み入れ、しかも制作環境と創造性の両方を備えたことは今のご自身の創作活動にどのぐらい重要だと思っていますか?
□いちばん大切なのは、すごく若いときに始めたからこそだったってこと。昔は今みたいに自分を疑うようなこともなかったし、何かをする前にいちいち考えることもなかった。最初はアングラなコミック作家によくある小っ恥ずかしいコミックをつくってたけど、18歳になるころには自分の周りにあるようなコミックではなく、みんなが読みたがるようなコミックでもなく、まるで絵を描くようにコミックを描いているような気持ちになってきたの。今は自分が自分であることにも、自分がつくったものにも違和感を感じなくなったかな。

■あなたはかねてから自分のドローイングはご自身の日常における妄想の混交だと主張されてこられました。ご自分の個人性やしばしば抽象的な独り言を使うことで、あなたは自分の作品のある部分は「内省的」だと思っていますか? それとも自分の作品はもっと普遍性を帯びていると信じていますか?
□分からないわね。そういうことは読む人に決めてもらうべきじゃないかしら。もう自分のことについてあれこれ人に話すのはやめようと思っているの。自分の作品は他の誰もを含んだものにしたいしね。私が願うのは読んだ人に「これってまるで自分のことみたい!」って思ってもらうことなの。「きっとこれは作者である彼女のことだよね?」なんて思われるよりもね。

■「We’re Wolf」や「Pamplemoussi」といった作品におけるアートワークは「美しくも恐ろしい」と形容されてきました。悲しみと幸せの両方を備え、もしくは暗くひと気のない風景に強烈にインスパイアされたり、このような多様な世界において心に響くアートをつくり上げることは、あなたにとっては極々自然にできてしまえることなのでしょうか? 対照的な認識のポイントを融合させられる作品をつくる際、もっとも興味をそそられる点はどのようなものですか?
□私は単に極端な人間なんじゃないかな。ある悲しみを私はずっと引きずっているように感じてます。いつもくよくよしていて、この悲しみに愛着のようなものすら感じているんです。ただ、自分の中から出てくるものは全部、自分で意図しているよりも柔らかい形で吐き出されるのよね。元々もっと暗いはずなのに。

これもジュヌヴィエーヴ・カストレイの代表作のひとつ。
レコード付の画集の『Pamplemoussi』

■あなたのドローイングの多くは自然環境と自然動物たちの美を描いています。しかし、あなたにとって重要なのは、オブラートにくるまれた表現の多い現実世界のありのままの姿、自然世界の残忍さを映し出すことなように思えます。これは正確な見方でしょうか?
□自然世界は残忍よ。だけど、私たちが住んでいる都市よりも活気に満ちていることも確かなの。私にとってはいつもそう。余りにもみんなが自然を美化しすぎていることは確かにそうね。そういうロマンティックな考えに囚われてエンターテインされないようになればいいのに。もっと本物の生を生きないと。

■自然環境について言えば、あなたの作品のどの程度がそれについての反応としてつくられていますか? そして、そういった作品を育んだカナダの環境からどのぐらいインスパイアされているのでしょう。こういう質問をするのは、私にとってあなたのアートは、以前カナダに行ったときに体験した穏やかで澄み切っていてデリケートな繊細さを視覚化したもののように感じるからです。
□あなたが言った私のドローイングの一部分は、カナダってこういう感じかなっていう私の「考え」から来たものではあると思う。でも、カナダ人の大部分はアメリカ国境のすぐ近くで暮らしているし、自分たちの国を実際に見てはいないんじゃないかな。北極圏に足を踏み入れたのも私の場合カナダではなくてノルウェーでのことだったし。だから、私はあまり自分の国のことを分かってないの。

■あなたの作品は非常に細かくて精巧に描かれています。その細部と微妙な筆さばきはページ上の絵に命を吹きこみ、ページ自体を探っていくような感覚すらありますね。30センチ角の『Pamplemoussi』など大きな判型での作品のほうが描きがいがありますか?
□私は大きな紙に描くのがすごく不得手なの。いつも余白をとろうとしちゃうのよね。だから一種の挑戦でもあるの。すべてを細かい描き込みで埋め尽くそうとしたこともあるけど、どうしても余白を残しちゃうのよね。そのほうが気持がよくて。

(続く)

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