今回は、タラ・ジェイン・オニールのバック・メンバー(ドラムス、ギター、キーボード他)として来日するジェフ・ソールを紹介しましょう。ちょうどこのツアーの概要を決めようとしていたときのこと。まずそれは、このツアーを、タラの完全なソロ演奏にするのか、前回のミラーとのコンビネーションのように、誰かとのダブル・ヘッダーにするのか(候補に挙がっていたのはヤナ・ハンターでした)、それとも誰か、自分の演奏をサポートしてくれるミュージシャンをひとり呼ぶか、この3つのうちどれにしようかという相談だったんですが、そのとき彼女からジェフ・ソールをメンバーとして連れて行くのはどう?と打診されたのでした。こちらとしては「え、ジェフ・ソール……誰?」ってなもんだったんですが、「彼はファックってバンドをやっていて……」と聞くに及び、「ああ、ファックっていたなあ!」と膝を打った次第なのです。とはいえ、彼らが90年代にマタドールやスメルズ・ライクからリリースした作品のジャケットの感じをなんとな~く覚えていたくらいで、こちらにあるのはちょっとローファイ気味のギター・バンドというような頼りない記憶だけ。その後、中古盤店で見つけた際に1枚2枚と揃えていったんですが、いや、これがなかなか。いま聴いても相当ですゾ! よく例えられるのは、ぺイヴメントとかアンレストになるのでしょうが、どことなく、キャンパー・ヴァン・べートーヴェンやヴァイオレント・ファムズ、ジップコード・レイピスツとかシュリンプ・ボート、もちろんヨ・ラ・テンゴなんかも含まれるグランジ以前の正しきアメリカン・アンダーグラウンドの軽妙さ、みたいなものが感じられて、そこがまた愛しい存在だなあとあらためて感じ入ったのでした。ともあれ、彼らは1993年にカリフォルニア州オークランドで結成。その後、サンフランシスコに移ったり、いまではジェフはポートランド在住なので、メンバーそれぞれ居住地こそバラバラかもしれませんが、サイトは絶賛稼働中だし、まだまだ「世界1最低な名前を持つバンド」のひとつとして旺盛に活動中の模様です。
そして、そのファックでドラムを叩いているのが、今回来日するジェフ・ソールその人。彼は、スーパーメガコーポレーション(「超巨大企業」……って)なるレーベルも運営し、そこから、ソロやファック他、メンバーとして関わっているウィンターミトゥンズ、ザ・ダブル・ユー、サッド・ホースなどなどのバンドの作品を活発リリース中で、なかなか面白い存在感を放つ人物です。レーベルのサイトでは、写真にあるビンの中に食パンのタグ(開け口を絞るところに使われるU字型のプラスチックのあれね)が、何枚入っているか賭けてみようコーナーがあったり(ちなみに勝者はタラのビデオ作品にも登場している舞踏家のフレッド・ネモで26ドルを獲得!)、カビの生えたレモンをe-ベイに出してみたり、と、かなりヤッちゃってます。最近のプロジェクトであるサッド・ホースも、ヤンチャなガレージ・パンク・ブルースでカッコ良いし、ツアー終了後「ジェフ・ソールのライヴが良かったね!」と囁かれる声があちこちから聞こえてきそうな予感が早くもしたり。また、今回、いろいろと彼の作品も物販スペースに並ぶと思いますので、こちらもどうぞお楽しみに。また、タラとのツアー終了後、ソロでお目見えする公演がひとつ決まるかもしれません。こちらも決定次第お知らせしますので、どうぞお楽しみに! それまでは、ファックの「Monkey Doll」(↑)と、ジェフ・ソールの「Who’s A Thirsty Gnome」(↓)を聴いてみてください。